【サンフランシスコ現地事情】第3回|訛りある英語とマスクの奮闘記

更新日:5月18日

コロナ下での窓口注文は双方とも四苦八苦

コロナによる自粛で、地元のレストランはほぼ 1 年、店内で食事ができない状態でした。(4 月上旬にやっと店内飲食一部解禁)

仕方がないので、みんなテイクアウト又はデリバリーを頼むのですが、実はこれが結構大変。

私の場合30数年アメリカに住んでいて、「英語の会話が出来る」という意味ではもちろん出来るのですが、やはりどうしてもちょっと日本風のなまりというか、発音が多分アメリカ人ネイティブほど強弱がつかなくて平坦になってしまう。(ちなみにこの「訛り」言うのは英語ではアクセントがある、と言います。「方言=Dialect」ほどは強くないけど標準アメリカ英語の発音とは一寸違うね、位の感覚)

 

それで、普段の面と向かっての会話はあまり問題がないのだが、コロナ下で店に行って注文するとなると 1 つ問題があるのです。

 

ただでさえ、多少「アクセント」があるため聞きにくい英語を話す人間がマスクをしてモゴモゴと注文するので、お店の人にはとても聞きづらいのです。しかも安全のために注文するお客と店の人の側にはガラス(強化プラスチック?)の仕切りがあるあるのでますます聞こえにくい。

 

ついでに言うと、お店のほうも、実はアメリカ人のネイティブでない場合が多い。中小の独立系飲食店はオーナーも従業員も、移民が多いのです。 先日友達とランチに行った中東系のケバブの美味しい店も親父さんが一生懸命やっているのですが、訛りのある私と訛りのある店主がガラスを隔てて二人ともマスクをしてモゴモゴ注文したり、注文を確認したりしているので伝わりにくいこと甚だしい。かといって、つばを飛ばすような大声でしゃべるわけにもいかない。壁に掛かっているメニューを指さしたりという身振り手振りを交えて、ようやく注文が成立したのでした。

 

ケバブ屋の注文カウンター(画像:Yelp)

 

スマホの注文サービス

アメリカのレストランでは、こういったピックアップやデリバリーの注文にドアダッシュ(DoorDash)、グラブハブ(GrubHub)、タクシー配車のウバーによるウバーイーツ(UberEats)などのサービスを使っているところがとても多いです。

こういったサービスは手数料として 10 %位の上前をはねるので、ただでさえコロナで採算が取れにくくて苦労している個人店主のレストランなどには必ずしも評判が良くないのですが、それでも使っている理由の 1 つは便利であると言うことのほかに、スマホで見て注文するため、上記のような聞き取りにくいことによる注文間違いが少なくなる為かと思います。 注文するお客のほうも、ネットで注文してしてボタンを押すだけなので、間違うことが少ない。もし万が一間違いがあっても、お客の方の注文ミスかどうかもちゃんとわかります。それでトラブルが少なくなると言うのが 1 つの大きな理由ではないかと思います。

 

GrubHub のスマホ注文画面

 

選択の多さが苦痛?

ちなみに、初めてアメリカに旅行、または駐在した方は、レストランやファーストフードで注文するのに結構戸惑ったことがあるのではないでしょうか。

それは英語に馴染まないと言う理由だけではなく、かなり英語が得意な方でも、アメリカの食事の注文の仕方の選択肢があまりにも多いからではないかと思うのです。

例えばみんなで食事に行って、飲み物はビールにしましょうと言う時、私がいた頃の日本は飲み物はと聞かれて、「ビール」と言えばそれで済んだのです。(今はビールもいろいろ選択があるレストランも多いかもしれませんが。)

でもアメリカのレストランだと、メニューにビールが 15 種類ぐらいあるのが普通。それもみんなが知っているバドワイザーとかそういう銘柄ならいいのだけれど、ちょっと気取ったレストランだと、全然知らない地ビールばかりで、見てもどれを選んでいいのか全くわからない。そこでウェイターさんを呼んで全部説明してもらって、それを全部聞き取ってという大変な作業が、肝心の食事の注文の前段階の「飲み物」の段階で発生するわけです。

 

近くのドイツ系レストランのビールメニュー(画像:Yelp)

 

ちなみに私は最近、この会話を避けるために、自分の好きなビールのブランドひとつを決めておき、地ビールのオンパレードが出てきた時はウェイターに「これこれの銘柄に1番近いのはないですか?」と尋ねると、一発で決まります。ブランドでなくても「おすすめのラガーは何?」などの、ビールのタイプを指定しても OK です。

 

注文の選択肢が多くて大変なのは、テーブルで座るレストランだけではなく、実はファーストフードでも結構大変です。

 

以前、ニューヨークで駆け出しの仕事をしていた証券会社のビルの一階にオー・ボン・パン(Au Bon Pain) と言う、ちょっと気取ったフランスパンをサンドイッチにしてくれるファーストフード店があって、なかなかおいしかったのですが、昼時に行くと結構列ができている。それで自分の番になったときに、ぐずぐずして後ろの人に迷惑をかけないように、あらかじめ注文するサンドイッチを決めて、それでいいかと思って一安心していると、ところがどっこい、そうはいかない。

 

例えばもう私はハムサンドイッチと決めたんだぞ、と思って意気揚々と注文します。

 

ところが、その後に矢継ぎ早の質問が来て、

・パンの種類はどうしますか?(6 種類ぐらいある)

・レタス・トマト・玉ねぎのスライスなどは入れますか?

・その他のソースはどうしますか?(マスタード、マヨネーズなど。サンドイッチによってはケチャップ系が入ってくることもある。)

 

ここまで決まってサンドイッチが終わった、これで大丈夫だと安心すると大間違い。

その後にサンドイッチにサラダがついているので、サラダを決めなければいけない。

そのサラダが 6 種類あって、さらに、どのサラダをとってもドレッシングの選択が 6 種類ぐらいある。

 

(ちなみにこの、なんでも大体 6 種類というのがどこの店でも共通しているのがミソなのだが、ひょっとして注文を取る側も覚えられるのが、6 種類が限界なのではないか。)

 

それで、この後に飲み物の選択がついて、一件落着となるのですが、ここまでの順列組み合わせを考えると、選択肢が一体いくつあったのだろうかと思ってしまいます。

 

と言うわけで、この注文の長いやりとりをマスクをしながらする、アクセント英語の私と、それを聞き取らなければいけないレストラン店員さんの苦痛が、もうじき終わることをとにかく祈っています。

 

補足ですが、「英語はしゃべれるけど、訛りがないアメリカ英語の発音に近づきたい」という方には YouTubeの「レイチェルズ・イングリッシュ」というチャネル がとてもおすすめです。

 

著者紹介

安藤千春/ Chako Ando

米国ベンチャー・イノベーションコンサルタント。サンフランシスコ・ベイエリアを拠点とし、米国の先端事例を参考に新規事業・リモートワーク・米国ベンチャー企業・イノベーション手法・フィンテック業界の調査、投資案件、日本企業との橋渡しを業務として活動。Cando Advisors LLC 代表。

(経歴)スタンフォード大学経営大学院修士(MBA): 東京外国語大学英米語学科卒業。旧日本興業銀行サンフランシスコ支店にてベンチャー・ファンド投資、住友銀行キャピタル・マーケッツ(NY)にてデリバティブ部門、大和証券ニューヨーク現地法人にてM&A、企業提携を担当。松井証券などのオンライン株式トレーディング・システム開発ベンチャー、ファイテック研究所の設立に参加。