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活用事例3

【茨城発】青果物卸会社がクラウドサービス開発に挑む。プロジェクトの先に見据える業界の未来絵図とは

 

茨城県大同青果
https://www.ibarakidaido.jp/

業種:卸売業  従業員数:76名
課題:自社システム開発PJがうまく進捗していない。

昭和47年、茨城県水戸市で青果物卸会社として創業した茨城県大同青果株式会社。

長年にわたって安全で安心できる青果物を届けることに取り組んできた当社が、近年力を入れているのがクラウドサービスの開発です。

今回は、同社でクラウドサービス開発を管掌する鈴木 貴元氏に、青果物卸業でありながらクラウドサービス開発に挑戦した経緯やフリーコンサルタントを活用するメリット、人材選定のポイントなどについてお話をうかがいました。

目次

 

プロフィール

茨城県大同青果株式会社 代表取締役社長 鈴木 貴元氏

大学卒業後、NECに入社し、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。2013年にアクセンチュアIT戦略グループに転職し、コンサルタントを経験。その後、ベンチャー企業を経て2015年にITコンサルタントとして独立。2017年10月より父親が代表取締役を務める茨城県大同青果株式会社に入社し、2024年より現職。

 

クラウド販売管理システム開発の必要性

聞き手:インタビューをお受けいただきありがとうございます。まずは、御社の事業について教えていただけますか?

鈴木氏:当社は青果の卸売事業を運営しています。農家さんや農協さんなど、さまざまな生産法人から仕入れた野菜や果物を、加工業者や仲卸さんに販売する卸売市場を運営しています。

私自身は3年ほど前から青果卸売業界向けのクラウド販売管理システムの開発を進めていて、将来的に自社サービスとして販売していくことも視野に取り組んでいます。

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自動的に生成された説明

聞き手:青果物の卸売業でありながら、クラウドシステムの開発を進めているというのは驚きました。どういった背景から開発しようと思ったのでしょうか? 

鈴木氏:一番は、青果卸売業界のIT化を進めて業界全体の効率化を図っていく必要性を痛感したからですね。

私は当社に入社する前、IT業界やコンサルティング業界に身を置いてまして、いろいろな業界のIT化プロジェクトを見てきました。そうした経験があることも影響しているかもしれませんが、当社に入社してみて青果卸売業界のIT化の遅れに強い危機感を抱きました。

聞き手:そうなのですね。例えばどういった領域で、IT化の必要性を感じていますか?

鈴木氏:分かりやすいところで言えば、特に受発注のIT化です。青果卸売業界の受発注は未だに電話・FAX・手書きが中心となっています。

例えば、スーパーなどのお客様と対面で野菜や果物を取引する際、何をどれくらい売るかといった内容を全て手書きでメモしていました。そして、それを後から販売管理システムに手打ちで入力していくといったことをしています。

聞き手:かなり大変そうな作業ですね。

鈴木氏:そうですね。当社のケースで言えば、伝票が1日に2〜3千枚くらいあるので、入力だけでもかなりの作業量になります。

入力はパンチャーと呼ばれる事務員が入力するんですが、大手だとパンチャー業務専門の従業員を十数人抱えている会社もあるくらいです。

聞き手:入力業務だけでも相当な人件費がかかりそうですね。お聞きしたような問題を解消できる販売管理システムはないのでしょうか?

鈴木氏:この業界は大手ベンダー数社がパッケージシステムを持っていますが、現状、先ほどお話したような問題を解消できるシステムはないですね。

実は、当社も最初から自分たちでシステムを開発しようとは考えてなかったんです。

ちょうど3年ほど前に、使用しているシステムが保守期限切れになりました。せっかくなので、現場でスマートフォンやタブレットから入力できるようなシステムに切り替えたいと思い、何社かベンダーさんにお声がけしたんです。

ただ、どの会社さんからも「できない」と言われてしまって…。仕方がないので、自分たちで作ろうということになりました。

 

システムサービス開発での留意点

聞き手:そういう経緯があったのですね。開発のプロジェクトは順調に進んだのでしょうか?

鈴木氏:約3年前にプロジェクトをスタートして、今は順調に進んでいますが、実は過去に2度プロジェクトが止まってしまい…当時はかなり苦労しましたね。

聞き手:それは大変ですね。。プロジェクトが止まってしまった背景にはどういった問題があったのでしょうか?

鈴木氏:1回目の停止背景としては、システム開発のために、あるベンダー企業をアサインしていたのですが、スキルのミスマッチが大きかったことが挙げられますね。

青果卸売業界は業務がわかりにくい部分が多分にあるのですが、アサインしたベンダーでは要件定義をクリアできなかったんです。

そこで開発チームを入れ替えたのですが、今度は仕事の進め方が合いませんでした。

当社が開発しているような業務システムの場合、ウォーターフォール型というか、一定きっちりやっていく必要がありますが、新しい開発チームはどちらかというとアジャイル型に慣れていて、仕事の進め方がなかなか合わず、うまく進めることができませんでした。これが2回目の停止につながった背景です。

聞き手:立て続けにプロジェクトが停止してしまったのですね…。その後、プロジェクトはどうなったのでしょうか?

鈴木氏:本当に大変でしたね。紆余曲折ありましたが、現在はフリーコンサルタントと新しいベンダーでプロジェクトを進めていて、プロジェクト自体はうまく回っています。

POD経由で参画してもらったフリーコンサルタントの方にはPM/PMOを担ってもらっています。

青いシャツを着ている男性

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聞き手:再スタート後はうまく進んでいるのですね。POD経由で参画したフリーコンサルタントの仕事ぶりについてはどのように感じていますか?

鈴木氏: 仕事ぶりについては、仕事の進め方や価値観など、何をやるにしても感覚が近くてやりやすいですね。

参画してもらった方がファームだけでなく、事業会社も経験していたことが影響しているかもしれませんが、当社の事情もふまえて立ち回ってくれるので、そういった部分がやりやすさに繋がっているように思います。

あと、参画後のキャッチアップは非常に速かったですね。当初はプロジェクトがうまく進んでいなかったわけですが、すぐにベンダー側と1on1を実施して、こちらともコミュニケーションを取りながら適切な対処をどんどん進めてくれて…私だけではどうしてもリソースが足りないので、非常に助かりました。

また、日頃感じていた社内の問題意識をフリーコンサルタントの方に話したことがあったのですが、それがきっかけとなり、組織課題の見える化や役割分担を整理しようという話になり…今ではバーチャル社長室という名前で社内改革の推進役も担ってもらっています。

聞き手:フリーコンサルタントの選定で重視した点はありますか?

鈴木氏:先ほどお話した失敗例からもスキルマッチが重要であることは当然ですが、人材を選ぶ際に一番大事にしたのは、同じ考え方・価値観を持っているかどうかですね。

未だにアナログ業務が多い青果物卸売業界や地方の中小企業を底上げしていきたいといった想いに共感してくれるかどうか、ここを非常に重視していました。

あとは、全体最適の思考ができるかといった点も見ました。

大企業の場合、プロジェクトが大きいが故に部分最適思考に陥りがちですし、それでもなんとかなる部分もあると思います。一方、私たちのような中小企業のプロジェクトでは全体最適の思考も求められるからです。

 

フリーコンサルタント活用のポイント

冷蔵庫を開けている男性

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聞き手:実際にフリーコンサルタントを活用してみて感じたメリットやデメリットはありますか?

鈴木氏:メリットとしては優秀な人材を比較的お手頃な価格で活用できる点ですね。コンサルティングファームに発注するよりもはるかに費用を抑えられるので。

デメリットとしては、対会社ではないので、発注側がマネジメントする必要があり、一定の手間が生じること。あと、当たり外れのリスクがあるということですかね。

聞き手:リスクを抑えるためにも、フリーコンサルタント選定時に気をつけた方がよいことなどありますか? 

鈴木氏:そうですね…フリーコンサルタントを活用する際の目利きは大切なポイントだと思います。

当社の場合、私自身がITやコンサルティング業界出身だったので目利きができましたが、私たちのような地方の中小企業では、社内に知見がない企業も少なくないと思います。そういった会社がフリーコンサルタントを活用する場合は、まずは目利き役を入れるといったことも必要になるかもしれません。

 

50年変わってないビジネスモデルの転換期

聞き手:将来の展望について教えてください。

鈴木氏:青果卸売業界のビジネスモデル転換期への備えとして、経営や業務、ITのレベルを引き上げていきたいと思っています。

青果卸売業界は1970年代にできたビジネスモデルですが、それから約50年ほぼ変わっていません。

しかし、AIやチャットGPTなどのテクノロジーが進化しているので、どこかのタイミングで青果卸売業界も大きな転換期を迎える日がくると思っています。

その時、経営や業務、ITのレベルが一定の水準を満たしていなければ、取り残されてしまう。だからこそ、今のうちから会社の土台を備えておくことが必要というわけです。

ただ、IT化ひとつとっても、いきなり最先端のレベルにすることはできません。なぜなら、急に仕組みを変えても人がついて来られないからです。

聞き手:確かにモノだけ入れても使ってもらえないケースというのはよく耳にしますね。

鈴木氏:はい、私が当社に入社したのは2017年ですが、その頃の当社のIT化の水準は、だいたい世の中で言えば1990年ぐらいのレベルで止まっていたんです。

そこから、さまざまなITツールの導入を進めてきましたが、今ようやく2010年くらいの水準まできたと思います。

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聞き手:これまで導入してきたITツールについて、費用対効果の面はどう見ていますか?

鈴木氏:正直、現状では全て費用対効果が出ているとは言い切れないと思います。ただ、それでもIT化は前に進める必要があると考えています。

10年後は人口不足により、恐らく今の半分の人数で同じ業務を回さないといけなくなります。当然、IT化ができていない組織は行き詰まるわけですが、先ほどお話したように、IT化の水準を一気に上げることはできません。

だからこそ、更に厳しい状況に直面する前から、一つ一つは小さなものでも取り組みを積み重ねる必要があると考えています。

今、私は45歳ですが、仮に65歳くらいまで働くとしたら、この先の10年で会社の土台整備を行い、次の10年で新しいビジネスモデル変換の仕込みを行って次の経営者にバトンタッチできればと思っています。

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